ケアマネージャーとはいったい何をする人でしょう?
それはご高齢者様の身の回りの世話を直接おこなう人ではなく、身の回りの世話をしてくれる人を地域から見つけ出し手助けする組織をコーディネートして安心してご高齢者様に地域で安心して生活していただくことがケアマネージャーの目的であって手段です。
ご高齢者様は様々な問題を抱えていますが手助けしてくれるのは介護サービスだけではなく、
介護保険サービス以外の民営サービスや有償無償のボランティア活動なども含んでいます。
また市町村の政策・助成サービスが受けられるよう支援する働きもあります。
ケアマネージャーは通常、側にいて身の回りの世話をしているわけではなく少し離れた場所で
全てのサービスが円滑に働くように見守っています。
介護サービスは1-3割の自己負担が発生しますがケアマネージャーが行う居宅介護支援費は
介護保険から全額が給付されているため自己負担は発生しません。
自己作成で利用者本人や家族が行うこともできますが通常は専門的な知識を持ったケアマネージャーと契約を結んでケアプランを作成します。
それは地域全てのサービスを知っているわけではないご高齢者様が複雑で多様なサービスを選択し
ケアプランを作ることは難しく、国はできる限り自立した生活が送れるように地域の一体的な支援を行うため専門的知見を持つケアマネージャーにその役割を定めています。
サービスは26種類54
20年前に始まった介護サービスですが、現在の介護保険サービスは26種類54サービスあります。
ご高齢者様が複雑で多様で多数の介護サービスから自分自身で選択し契約しなければならないと言われたらあなたはどう思うでしょうか?
介護保険サービスは契約を前提とているので契約を取り交わさなければ様々なサービスを利用することはできません。それらのサービスの決定を支援し契約に至る手続きを手配することがケアマネージャー(介護支援専門員)の最初のわかりやすい働きです。
まずケアプランを作りましょう
通所介護(デイサービス)を希望する場合には利用者様が希望するサービス曜日や時間をデイサービス事業所と交渉し調整しなければなりません。介護事業所は新しい利用者を受け入れるにあたり新しい利用者がどのような既往歴があり個人的歴史があってどのようなサービスを希望しているのかまたそれを提供するにあたって留意するポイントなどの情報を担当ケアマネージャーに問い合わせてきます。
担当となったケアマネージャーはそれらの情報を取りまとめなければなりません。ご利用者様の全ての個人情報は個人情報保護法により介護サービス以外での利用は固く禁じられております。またすべての介護事業所は個人情報の取り扱いを尊守することを市町村と契約で取り交わしを行っておりますので問題が発生した場合の罰則規定についての合意も市町村の指定・更新の際にすべて契約書で取り交わし行っています。アセスメントシートと基本情報取りまとめ作業はケアマネージャーが担当になった最初のサービス調整作業です。
通所サービスは提供範囲と送迎体制を確認しなければなりません
通所サービスであれば曜日・時間の調整もさることながらサービスの提供範囲と送迎体制を確認しなければなりません。通所サービス事業所は複数の送迎車で利用者のお宅まで往復の送迎を行わなければならないことから広範囲にサービス利用者が散らばっています。その場合に同じ方向に向かう送迎車は曜日ごとに割り振られていることが多いため「月曜日はそちらの方面には行くが火曜日にはいかないので受け入れることはできません」と断られることもあります。
ご利用者様の都合でその曜日しか空いていないとするならば他の通所サービスを探さなければなりません。またデイサービスを利用している各曜日ごとのご高齢者様の性格などによりデイサービス事業所の曜日ごとの雰囲気が大きく変わることもあります。どの曜日が自分には合っているのか、もしくは合っていないのかを実際にお試し利用して確認した後にサービス調整を行うことはよくあります。通常は2-3箇所のデイサービス事業所をお試し利用することが多いです。
朝のゴミ出しにはヘルパーさんが足りない
訪問サービスなどを予定に入れている場合には他のご高齢者様の利用される時間帯というものが集中することがあります。例えば朝のゴミ出しの時間に来てほしいという依頼が同じ時間に集中することです。
1事業所にヘルパーさんの数には限りがあります。すべてのご利用者様が同じ時間を指定する場合には前後にずらすことがありますがどうしても調整できない時には他の訪問介護事業所を探すこともあります。また夕方の5時を過ぎると夜間割増料金が発生するため5時の夕方のサービス提供時間もサービスが重なる時間となります。
また深夜に来て欲しいと言う介護依存度が高い利用者もいらっしゃいます。当然そのそのような方は玄関を開錠することができないため事業所が鍵を預かる場合もあったり大きな南京錠に鍵を保管して暗証番号で保管する場合もあります。この場合すべての介護事業所に鍵の取り交わし確認書類をケアマネージャーが一括用意することがあります。
ヘルパーさんが救急車で同乗しなければならないことがあります
医療依存度が高いご利用者様に異変があった場合には救急搬送をしなければならないことがあります。 通常そのような時は同居するご家族様に同居していただくのですがご家族様が対応できない場合にはヘルパーさんが同乗しなければならないこともあります。
当然、その場合には帰りにバスを利用したり夜間であればタクシーを利用しなければなりません。 またその移動時間にかかる費用を誰が負担するのかなどもあらかじめ決めなければならないこともあるのです。
隣家で暮らす奥様が利用しているデイ職員や訪問ヘルパーとして働いている場合もあります
いよいよ介護サービスを使う段になって思いがけずデイ・訪問介護事業所に勤めている職員の中に自分が暮らす周辺地域の住人が働いている場合があります。全ての介護事業所は個人情報の取り扱いについて行政と取り交わしを行い契約を行った事業所は職員の雇用関係によって職員管理責任があります。
法的には介護サービス以外の目的で個人情報を利用することができない仕組みとなっていますが、やはりこれは人間の性で「お互いにあまり知られたくない」という思いがあります。それは特に訪問サービスでは顕著です。たまたま近くにデイサービスがあるといって相談に行きそこに併設するデイサービス職員兼ケアマネージャーを紹介されたからケアマネジメント契約したという場合にはそのデイサービスを利用する限り「小さな思いわずらい」は最後までつきまといます。
当事業所ではお勧めする事業所にそのようなケースが発生しないかを事前に調べ両者がマッチングしないように配慮を行っています。場合によっては隣の区・市の通所・訪問サービス事業所を利用することもありむしろ最近は多い傾向です。
全てのご高齢者様が加齢によって脳機能が衰えているわけではありません。そのような基本的なプライバシーに配慮することは非常に大切となっています。デイサービス職員兼ケアマネージャー・訪問介護職員兼ケアマネージャーは多くいます。その数は全体のケアマネージャーの9割になります。
ケアマネージャー業務は多くの場合、目に見えることはありません。
単純なことであれば説明はできますが複雑なことを見えるようにして簡単に説明することは容易ではありません。サイト運営者でもあり単立のケアマネージャーである当事業所ではそれを””見える化””することを推進しています。「人に言われてするのが作業 自分で判断してすることが本当の意味での仕事 」だからです
特養・老健施設もショートステイの病床は少ない
時々、ご家族様が冠婚葬祭や病気などにより家庭でケアを受けられなくなった場合にはショートステイなどの利用を早期に決定しなければなりません。あまり知られていないかもしれませんが特養・老健のショートステイは病床数が少なく多くの施設が1-5病床を多くの利用者で定期利用しているのが実情です。
その予約は3ヶ月前から受け付けており急な対応が必要になった場合にはほとんど利用できません。 そのためにケアマネージャーは地域内だけではなく地域外の介護サービス事業所を把握し素早くご利用者様の履歴書とも言える基本情報を取りまとめ契約合意までの道筋を整えなければならなりません。
低所得者世帯への対応
また経済的な理由により居宅サービスが続けられなくなった場合には担当する行政窓口への連携を行うこともあります。ご高齢者様に身寄りがない場合には弁護士を紹介し法定後見人を設定することもあります。
また市町村ごとに弁護士費用を助成する制度もあるのでその窓口への連携も行います。短期的な経済困窮であれば市町村ごと低所得者政策の窓口と連携したり社会福祉協議会の様々な障害者施策、高齢者政策や貸付金制度についても相談経路をご紹介します。
医療介護で働く 同居者が高齢者世帯にいた場合の対応
ご家族様同居者の中に医療介護現場で働く親族がいた場合にはご高齢者様は同系列の介護サービスを使うことは予測に難しくはありません。時としてそのような配慮が必要であることが多いことも事実です。介護サービス利用と雇用関係が結びついている場合においては目的と手段が結びついている背景も多く事実関係を無視したアプローチはかえって混乱を招くことがあります。そのためにケアマネージャーは初回面接(インテーク)がどのような経緯で始まったのかをしっかり把握する必要があります。
最近のケアマネジメントにおいては対人援助技術と言ってソーシャルワーク的な技法の研修が必須となっています。 様々な心理学アプローチ方法・分析・評価について様々な思考ツールが存在しています。
人間の本来的な欲求としての生理的欲求や社会的欲求への内発的・外発的動機付けの構造、
基礎構造であるマズローが唱えたヒューマンニーズ階層
心理学の性格特性分析ツールである一定の原理に基づいて性格をいくつかに分類すること(類型論)やクレッチマーの体格と性格からの分析・ユングのリビドー方向性からの性格分析
シュプランガーの 価値感からの性格の把握など様々な手法があります。
また活動性・支配性といった特性からの構成量を把握し独特な性格を明らかにする(特性論やオールポートの共通特性の測定・チャッテルの行動特性35の特性群を因子分析にかけ12の基本的な特性因子数の検出抽出と分析・類型論特性論の融合から人間が求めるウェルビーイングとしての適応機制による分析(代償・補償・昇華・同一化・合理化・逃避・抑制・対抗・攻撃)など。
精神分析のフロイトが提唱した自我心理学やハインツコフートが提唱した自己心理学・行動主義心理学から心的過程を見るワトソンの行動主義など、人間を理解する方法には精神分析と行動主義心理学そして第三の心理学として人間性心理学(交流分析など人格と個人の成長と変化における体系的な力学的関係・心理療法理論)の発展など様々な手法が存在しています。
対人援助における教育的・支持的機能を強化するためのスーパービジョンの活用 (個別化・意図的な感情の表出・統制された情緒関与・非審判的態度・秘密保持 )やカウンセリングマインドのスキル(支持・調和的関係・受容・共感的理解・明確化・傾聴・空間作り・洞察・カタルシス・情報提供・自己覚知・人格尊重)またスーパービジョンのグループワーク・グループカウンセリングへ職場研修(OJT)の応用 などがあります。
介護保険制度が始まった当初ケアマネージャーに必要なスキルは主にアセスメント技能・分析技術・情報収集・情報分析と判断提案するために必要な技能と政令市制度上行う業務を適切に遂行するための法的な事務的な技術技能でした。しかし現代のケアマネージャーにはコミュニケーション能力の向上と確かな知識技術が必要となってきています。優れた知性は上記のような学問を確立しました。 そして私たちはそれを学ぶことができるのです。
ケア現場におけるケアマネージャーとご高齢者様・ご家族様との面接で得られる様々な問題の本質を読み解かなければなりません。同時に職能としてのケアマネジメント業務の社会的有用性と合意(コンセンサス)を高めなければなりません。ケアマネが自宅に訪問して5分で印鑑をもらって帰ってくるだけではあまりにも悲しすぎます。
補足・・・また介護保険制度ではケアプラン作成には自己作成と言ってご家族の中にケアプランを作ることができる場合には予め行政へ申請し自己作成できる仕組みがあります また別居親族による訪問介護サービスの提供も事前に多くの協議が必要ですが認められていることはあまり知られていません 。
高齢者虐待報告 行政がプライベート介入で関係悪化することも
近年では家庭内における高齢者虐待についても担当するケアマネージャーは事態を重く見た場合には行政へ報告する責任があります。当然これらはプライベートに介入することですので本人やご家族の了解を得た上で行ないます。
虐待には暴力だけでなく暴言、経済的虐待、セルフネグレクト(ゴミ屋敷)などがあり様々な地域における隠された問題が埋もれています。必要であれば家庭裁判所で接近禁止命令を受けて別世帯(既成事実)となり生活保護受給への手助けをすることもあります。これは国民の最低限の社会生活を営むために定められている日本国憲法の原則です。
入所できる終の住処を探す
「 長年在宅で世話をしてきたが もうこれ以上できない・・・」とご家族様からの訴えを聞くこともあります。長期的に在宅でのサービスが困難になった場合には老人保健施設や有料老人ホームへの紹介や介入が必要になることもあります。
特別養護老人ホームへの入所は要介護3以上の高齢者でなければ申し込みができないためタイミングを図ります。場合によっては区分変更申請などをもケアマネージャーは代行します。 概ね名古屋市内の特別養護老人ホームは1000人単位での入所待ち高齢者がいるため定員の空きが出るまでは緊急避難的に有料老人ホームなどへ入所することもあります。
しかしこれら有料老人ホームへの入所は長く継続できなければ意味がありません。場合によっては途中で経済が困窮する場合もあり、その場合には結果的に行政窓口と連絡調整が必要になる場合もあります。また高齢者人口が少ない県には相対的に特別養護老人ホームへの入所待ちが少ない場合もあり選択候補として残ることもあります。子供たちやご親族が他県にお住まいであればそのようなことも考えます。しかし住所地特例があるため県が定める優先入所事項の査定点数では同県在住の高齢者と比較し入所優先度が低く判定されることもあり施設入所についてはさまざまなタイミングが存在します。ケアマネージャーはあらゆる選択肢を想定する能力と計画性・情報収集と連携フットワークがなければなりません。
地域連携や医療連携
また在宅においては病状が悪化もしくは退院後に医療的管理が必要となったご高齢者様が主治医とともに医療・介護サービスの一体的調整をしなければならないこともあります。 地域に存在する医療連携ネットワークと円滑な情報共有ができるように日頃から研鑽を積むことも必要です。様々な地域の医療連携システムは ICT 化などが進んでおり電子ツールの取扱いもケアマネに必要なスキルとなりつつあります。