トロッコ問題とスーパービジョン

ケア

山口県岩国市立東小と東中で、「多数の犠牲を防ぐためには1人が死んでもいいのか」を問う「トロッコ問題」を資料にした授業があり、授業に不安を感じている保護者からの指摘を受けて、児童・生徒の保護者に文書で謝罪したニュースが2019/09/29にありました

 

「トロッコ問題」とは倫理学の思考実験でブレーキがかからない列車が5人の上を通り過ぎるが、進路を変えることができれば一人の犠牲で済むと言う倫理的な問題です
しかしこれが最初から一人の上に線路が引かれていたのであれば結果はどうなったのでしょうか?
これは複雑な判断においては初期値デフォルト時の設定により結果を誘導することが可能となることを意味しています

列車の進む方向を変えるという判断には多大なる負担がかかります
行動とは決断です 決定する意思です
意思決定場面では全てが 選択する・選択しない と二元論で語られていますが
実際の複雑な事柄については 選択できないこと に遭遇することがあります
すなわち「第三の選択である選択しない」という選択があることについて
語られることがありませんでした
人間は本来的に””何も決めずに生きていたい””というものです
ここで取り扱うのはこういった課題です 

自らの判断と思っていた行動が実は
初期値の電車のレールによって定められていたとするのであれば・・・
意思決定が他人の意思決定支援者に誘導されていたのだとすれば・・・ 

 これをリバタリアン・パターナリズム(libertarianism)と言って私たちの日常においても見かけられる意思決定支援行動です

それは強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益のためだとして、本人の意志は問わずに介入・干渉・支援することをいいます。個人の利益を保護するためであるとして、国家が個人の生活に干渉し、あるいは、その自由・権利に制限を加えることです
これは私たちが日頃持ち歩いている運転免許証の裏にも書かれています 日本では署名捺印と希望する臓器に丸をつける記載になっていますが外国では初期記載が違うケースもあるのです 

リバタリアン・パターナリズムにはマジョリティの意向をデフォルトにしつつも、マイノリティにそれを強制しないという概念も含まれています
身近な話ですと Windows OS の中にはウェブブラウザーとして Internet Explorer やエッジが最初から組み込まれていますが、これは大多数の利便性を考えた上に初期値が定められているのであって必要でなければ Chrome などのブラウザをインストールして使うことも可能となっています このようにマイノリティに対して選択肢を示すことは公平な市場を形成します
しかしマイクロソフト社はこのデフォルト値によって EU 連合から独占禁止法の判決を受け賠償金を支払って和解した経緯もあり意思決定支援についてのプロセスについては厳格さが求められます

介護保険を取り扱うケアマネージャーは利用者の意思決定支援についてインフォームドコンセント「説明と同意」を求めなければなりませんがこれは医療における医師においてとても大切なスキルとなっています
ケアマネージャーの個人的な客観的意見でなく中立的・合理的な判断であることを自らが見極めなければ意思決定支援を誘導することは決してできずスーパービジョントレーニングでも用いられています

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