選択しないという選択

ケア

アップルコンピューターや iPhone を市場に販売したスティーブジョブスはいつも黒い T シャツを着ていたといいます
なぜ彼はそんなことをしたのでしょうか
彼はこう言っています「人間の意志力は消耗します 私は全ての意思の決定ネルギーを仕事に注ぎ込みたいのです」
「毎朝に何を着るのかを考えるために大切な意志力を使いたくない」と彼は言ったのです

それは正しいのだと思います
なぜなら私たちは日頃たくさんの決断をしています
「朝起きて何を食べるのか何を着ていくのか」 「これから何をしようか」などです
朝方はクリエイティブな仕事ができても夕方からはダラダラとデスクに向かってしまう
それはまさしく意志力が消耗した結果であるとも言えます

なぜこのような話をしたかと言いますと
介護保険においても多くのサービスの中からご高齢者様は自分の希望するサービスを選び出し決定しなければなりません
本人にとっては自分に合いそうなサービスを10-30件提示されるよりも””人となり””を理解したケアマネージャーが1-3件提示しその中から選んでもらことの方が理解・意志力が低下している方にとっては親切なことなのです
私が思うのに人間は三つ以上のことを理解することは難しい
三つまでならなんとか両手で持つことができると感じる場面が多くありました
それはこの職務に携わるようになってからの確信です

その前提として、ご高齢者様のことを理解し個人的背景を理解した上で意思決定を支援する技術が必要となります 合理的配慮すなわちこれは技術です
これは医師が診療室で行うインフォームドコンセントに基づいた考え方です
例えば癌と告げられた患者が適切な判断をするためには何も選ばなかった時の最悪の状況を説明した時の方が患者の決定を適切に素早く誘導することができます  

意思決定支援とは一つの技術です  それをわたしたちは学ぶことができます
数年前にトロッコ問題(以前書いたブログ)がありました・・・
最初の設定のシチュエーション次第ではその後の決定は違ったものとなります
介護保険制度では高齢者が「選択する」「選択しない」と言う2分律で成り立っています
これは制度を明文化した時点での大前提でもあり仕方のないことです
しかし私はここで第三の選択をここに付け加えたいと思います  

それは「選択しないという選択」です
これは私たちの日常においても散見されることです
例えば「光電話にすると電話料が安くなるから光ファイバーを導入してください」
「電気料金とガス料金をまとめると安くなるのでうちの会社でまとめてください」といった電話など
その時にはすぐには答えることができないようなことが私たちの日常ではよくあります
そんな時私達がするのは「よくわからないからほっておく」という行動です
すなわち””選択しない選択””です

これは生命保険に勧誘される場合にも散見されます
生命保険の内容が分からなければ誰も契約しようとはしません
説明を受ければ契約率が上がりますが、中には説明を受けてもしっかり理解できなければ契約しようとはしないでしょう

人間は理解できないことを選び取ろうとはしない
ご高齢者様は特に自分の理解を超えたサービスは絶対に受けないということです
すなわち選択ができるようにするために多くの時間をかけて様々な情報を与えなければいけません それを意思決定支援といいます
認知症でそれができないのであればご家族様などをに説明して代わりに選択してもらう必要があります  この決定に法的援助を加えたものが後見人制度です  

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